ワクチンと予防接種

ワクチンは、さまざまな感染症にかかる前に接種することで感染症にかかることを防いだり、かかっても症状を軽くしたりすることができるものです。ワクチンは病原体(ウイルスや細菌)や病原体から産生される毒素をもとに作られていますが、感染症を引き起こす病原性をなくしたり、弱めたりしているため、人体には安全です。

予防接種とは、ワクチンを接種して感染症から身を守るための免疫をつけることで、感染すると重症化するリスクが高い人や、あるいは流行しやすい感染症に罹患するリスクをできるだけ低減するために行われるものです。予防接種によって特定の感染症に対する免疫がつけば、感染しても発症しにくい、もしくは発症しても軽度で済むようになる、という効果が期待できます。
また、予防接種は単に個人の身を守るだけでなく、接種する方々の数が多ければ人口の大部分が特定の感染症に対する免疫を持つようになり、社会全体が免疫を獲得した状態(集団免疫)となります。このような状態になれば、ワクチン接種することができない方々の市中感染のリスクも低減できるようになります。このように予防接種を受けられることは、社会全体を感染症から守るという意味合いも含まれています。

当院では、以下の予防接種を取り扱っています。

子宮頸がんワクチン

ヒトパピローマウイルスワクチン(子宮頸がんワクチン)とは

子宮頸がんの発症の原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するためのワクチンです。このワクチンは、小学校6年生~高校1年生の年齢に相当する女子を対象に定期接種(公費助成)が行われています。対象の年齢以外でも接種は可能ですが、公費助の対象にはならず、全額自己負担となります。

ヒトパピローマウイルスワクチンには、3種類(2価、4価、9価)あり、いずれのワクチンも定期接種の対象となります。

  • 2型ワクチン(サーバリックス)…子宮頸がんの主な原因とされる16・18型のHPVに対して予防効果があります。
  • 4価ワクチン(ガーダシル)…16・18型のほか、尖圭コンジローマの原因とされる6・11型のHPVについても効果があります。
  • 9価ワクチン(シルガード9)…4価ワクチンの効果に加えて、子宮頸がんの発症に関わる31・33・45・52・58型のHPVに対しても効果があります。9価ワクチンでは、子宮頸がんの原因とされるHPVの8~9割をカバーしています。

接種回数はワクチンの種類によって異なります。

  • 2価ワクチン 3回接種
  • 4価ワクチン 3回接種
  • 9価ワクチン 
    初回接種が15歳未満であれば2回接種
    初回接種が15歳以降であれば3回接種

なお、ヒトパピローマウイルスワクチンを接種しても子宮頸がんを発症する可能性はゼロではありませんので、子宮頸がん検診の対象年齢となった際は、定期的に子宮頸がん検診も受診してください。

風疹ワクチン

風疹ワクチンとは

風疹を予防するワクチンには、風疹のみに効果がある風疹単独ワクチンと、風疹と麻疹を同時に予防することができるMRワクチンがあります。風疹に対する予防接種は小児期の定期接種の対象であり、現在は2回のワクチン接種が行われています(定期接種で使用されるのはMRワクチン)。
風疹の定期接種(MRワクチン)が計2回となったのは2006年以降からで、それ以前は1回の接種、もしくは世代によっては1回も接種したことがないという年代もあります。そのため、現在の成人では風疹に対する免疫力が低い方も多くいます。

妊娠初期から中期の女性では特に風疹ウイルスの感染に気をつける必要があります。この期間に風疹に感染してしまうと、胎盤を通じて胎児に感染することがあり、生まれてくる赤ちゃんが、先天性風疹症候群(難聴、先天性心疾患、白内障等の先天異常を含むさまざまな症状を呈する)となるリスクがあります。
妊娠中または妊娠の可能性がある女性は風疹ワクチン(MRワクチンも含む)を接種することはできません。また、ワクチンを接種した後は8週間の避妊期間が必要となります。風疹は、妊娠前からの予防が重要な感染症です。また、妊婦さんと同居するご家族の方についても、感染リスクをできるだけ低減させられるよう、風疹ワクチンの接種をおすすめします。ワクチンを接種したかどうかわからない場合は抗体検査を行い、抗体価が不十分であれば接種することができます。

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンとは

日本では毎年、冬から春の季節(12~3月)にかけてインフルエンザが流行します。インフルエンザワクチンはインフルエンザが流行する前の接種が重要となります。ワクチン接種後、効力が発揮されるまでに2週間程度の期間が必要で、その効力の持続期間は約5ヵ月です。インフルエンザワクチンは流行のピークを迎える前の12月中旬までに接種を終わらせるのが有効です。
なお、年齢によってインフルエンザワクチンは接種回数が異なります。
13歳未満のお子様については、計2回のワクチン接種が必要となります。接種間隔については、1回目の接種を終えた2~4週間後に2回目の接種をお願いしています。
13歳以降の方は、ワクチン接種回数は1回で構いません。(医師の判断で2回接種を勧める場合もあります。)

RSウイルスワクチン(アブリスボ)

RSウイルスワクチン(アブリスボ)とは

RSウイルスは誰もが感染する可能性のある一般的に存在するウイルスですが、生後数ヶ月以内の赤ちゃんが感染すると、重症化してしまう場合があります。赤ちゃんの気管支は細いため、炎症によって細気管支炎や肺炎を引き起こすと呼吸困難を引き起こし、入院治療が必要になるケースが少なくありません。RSウイルス自体に対する治療薬は現地点では存在せず、酸素投与や点滴治療による対症療法が中心となります。

RSウイルスワクチンは、妊婦さんに接種することでお母さんの体内で作られた抗体が赤ちゃんに移行し、生まれた後の赤ちゃんに対してRSウイルスからの感染を守るためのワクチンです。妊娠中のワクチン接種によって、赤ちゃんの生後半年間の重症下気道(細気管支炎、肺炎など)感染症を低減させる効果があります。
2026年4月から、RSウイルスワクチンが妊婦さんへの定期接種になりました。ワクチンを受けることができる期間は妊娠28週0日から36週6日までで、妊娠中にRSワクチンを接種しても早産や妊娠高血圧症候群などの合併症は増加しないことが分かっています。