ピル
ピルとは
ピルは卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類の女性ホルモンが組み合わさった合剤のことをいいます。使用の目的は、①避妊を目的として使用する場合、②月経困難症や月経前症候群などの治療に用いる場合、の2つに大きく分けられます。
ピルは脳下垂体に作用して卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の分泌を減少させ、卵胞の発育と排卵を抑制します。卵胞の発育が抑えられることで女性ホルモン(エストロゲン)の分泌も抑制され、月経時に剥がれ落ちる子宮内膜が発育せず薄いままとなります。その結果、避妊の効果と共に、月経量が減少、月経時につくられる炎症物質も減ることで月経痛が軽くなります。また、月経前に体調が悪くなる月経前症候群に対しても、症状の改善に有効といわれています。
ピルは、エストロゲンの含有量の違いによって、低用量ピル、中用量ピル、高用量ピルに区別されています。ピルの中に含まれるエストロゲンの量が0.05mg未満のものを低用量ピルといい、エストロゲンの量が0.05mgのものを中用量ピルと言います。エストロゲンの量が0.05mg以上のものを高用量ピルと言いますが、現在使用されることはほとんどありません。エストロゲンの用量が少ないほど副作用のリスクが低くなります。
低用量ピルは避妊目的や月経困難症治療のために用いられ、中用量ピルは月経移動や月経調整のために使用されることが多いです。
低用量ピル(LEP)、経口避妊薬(OC)
低用量ピルの効果、メリット
①避妊効果
正しく内服できていれば、99%以上の避妊効果があります。排卵を抑制することで、妊娠が成立しません。
②月経痛の改善、出血量の減少、出血期間の短縮
低用量ピルを内服することで子宮内膜が厚くならず、月経の際の出血量が減少し月経痛を軽くします。月経量が減少することで月経期間の短縮にもつながります。結果的に生理用ナプキンの交換回数が少なく済んだり、ナプキンの長期使用によるかぶれなども予防することができます。
③月経不順
低用量ピルを内服することで生理周期が安定します。周期が安定することで、月経開始日が予測可能となり、急な生理発来で焦ることはなく安心して過ごせます。
④月経前症候群(PMS)
月経開始前になると女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が急激に減少しますが、このホルモンの急激な変動が月経前症候群の原因であるといわれています。特に、排卵後に分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)が月経前に体調悪化を引き起こすとされています。ピルは排卵を抑制することで黄体ホルモンの分泌を抑えることができ、ホルモンの変動を引き起こさないため、その症状の改善に有効と言われています。
⑤肌荒れの改善
ピルを内服することでホルモンバランスが安定し、肌荒れを改善する効果があります。
⑥卵巣がんの予防
排卵を抑えることで卵巣への負担を低減し、卵巣がんの発生を抑えるとういう医学的なエビデンスがあります。
ピルの副作用、デメリット
①吐き気・嘔吐・倦怠感
低用量ピルを飲み始めてすぐは、吐き気や嘔吐、倦怠感といった症状が現れることがあります。低用量ピルに含まれている卵胞ホルモンと黄体ホルモンには、脳に「妊娠した」と誤認識させる効果があります。そのため、身体が薬に慣れるまでは妊娠初期と似たような症状が現れることがあります。内服を続けることで薬の作用に慣れると症状が改善されるケースがほとんどです。
②下痢・便秘
ピルによって消化管に影響が出る場合があります。症状自体は、飲み始めてから2~3ヵ月程度で徐々に治まっていくことが多く、あまり心配する必要はありません。しかし、下痢の頻度が高い場合にはピルの有効成分が排出され、避妊効果が弱まっている可能性があります。そのため、下痢の頻度が高い場合や、あまりにも長く続く場合は医師に相談してください。避妊目的でピルを服用している場合で下痢が続いているときは、コンドームなど別の避妊方法を合わせて行うようにしてください。
③不正出血
不正出血は、ピルを飲み始めたころによく見られる副作用の一つです。出血がなかなか止まらず不安に思う方もいますが、身体がホルモンバランスの変化に慣れれば2~3ヵ月程度で徐々に出血は治ります。不正出血が長く続く場合は、ピルを変更することで不正出血を抑えられる可能性があります。ただし、出血量が多い場合や、腹痛・腰痛を伴う場合は、ピルの副作用ではなく別の病気が潜んでいる可能性もあるため、受診をおすすめします。
④むくみ・乳房の張り
これらの症状は、ピルに含まれるホルモンの一時的な影響で、ピルをしばらく服用していると徐々に症状は治まっていきます。しかし、むくみは次に紹介する「血栓症」にみられる症状の一つでもあります。むくみの場所に痛みが生じたり、皮膚が赤黒く変色している場合は血栓症の疑いもあるため、すぐに病院を受診してください。
⑤血栓症
ピルの副作用として注意すべきなのが、血栓症です。血栓症とは、血管内にできた血栓(血の塊)が血管につまることで、脳梗塞や心筋梗塞、肺梗塞などの命に関わる病気を引き起こします。ピルを服用している人は、服用していない人と比べて血栓症を発症するリスクがやや高い傾向にあるため注意が必要ですが、過度に恐れる必要はありません。
血栓症の発生頻度
- ピルを内服しない女性 1〜5人/1万人
- ピル内服中の女性 3〜9人/1万人
- 妊娠中の方 5〜20人/1万人
- 産後12週間までの方 40〜65人/1万人
ピルの服用中に次のような症状がみられた場合は、使用を中止し直ちに病院を受診してください。
- 皮膚が青紫色または赤黒くなる
- 手足がしびれる
- ふくらはぎに鋭い痛みを感じる、太さの左右差がある
- 突然動悸が激しくなる
- 舌がもつれてうまく話せない
血栓症は早期に適切に治療すれば治るケースが多い疾患です。そのため、何か違和感を覚える場合は、早期に受診をおすすめします。実際に血栓症を疑うような症状のある方は、循環器内科や血管外科に紹介させていただきます。
低用量ピルによる血栓症の予防のためには、以下のことをお願いします。
- 喫煙をやめる
- 肥満を改善する
- 適度な運動をする
- 水分を十分に摂る
- 長時間の安静を避ける
OCもLEPもピルに含まれる成分はほぼ同様ですが、OCは自費診療、LEPは保険診療の適用となります。いずれも1日1錠、毎日決まった時間に服用するようにしてください。
ピルを飲み忘れた場合について
1日飲み忘れた場合(最後の内服〜24時間以上48時間以内)
思い出した時点で1錠すぐに内服、そのあといつもの内服時間に1錠内服
※思い出した時間がいつも内服の時間であれば同時に2錠内服してください。
※ピルは1日でも飲み忘れると出血することがあります。
2日飲み忘れた場合(最後の内服〜42時間以上、48時間以内)
思い出した時点で1錠すぐに内服、そのあといつもの内服時間に1錠内服
※思い出した時間がいつも内服の時間であれば同時に2錠内服してください。
※2日忘れた場合でも、3錠一気に内服することはありません。一度に内服するのは2錠までです。
※2日飲み忘れた周期は、避妊のためにコンドーム等他の避妊方法を使用してください。
3日以上飲み忘れた場合(最後の内服〜48時間以上経過)
現在内服しているシートの内服は中止し、生理再開を待ちます。生理が始まったら新しいシートで内服を開始してください。
※避妊のためにコンドーム等他の避妊方法を使用してください。

中用量ピル
中用量ピルとは
中用量ピルは低用量ピルと比較するとホルモンが強く作用するので、効果が早く現れやすいという特徴がありますが、副作用のリスクも高く、身体への負担も大きい場合があります。現在では、月経日を移動させる際(月経予定日より早くする、もしくは遅らせる)、月経の出血をコントロールする際に用いられることがほとんどです。
月経予定日の移動というのは、試験や試合、大事なイベント(旅行、結婚式 等)などに月経が重ならないように月経をコントロールさせていくというものです。月経予定日の直前になってからの受診では理想的な調整ができない場合がありますので、日程に余裕を持って受診されることをおすすめします。
アフターピル
アフターピルとは
緊急避妊薬とも呼ばれるもので、妊娠を希望しないものの避妊なしで性交をした、あるいは避妊具を使用したにも関わらず、破れた・脱落したなどして望まない妊娠の可能性があるという場合に使用するのがアフターピルです。服用後の副作用としては、頭痛、吐き気、不正出血、眠気などがみられますが、服用回数は1回のみなので、これらの症状はいずれも一過性のものとなります。
アフターピルは、性交をしてから72時間以内に服用する必要があります。72時間以内の服用で81%の妊娠を阻止することができますが、より早く服用した方が妊娠阻止率は高くなることがわかっています。
妊娠阻止率
24時間以内に内服 95%
48時間以内に内服 85%
72時間以内に内服 58%
正しく服用したとしても妊娠する可能性はあります。次の月経発来の予定日を1週間過ぎても月経が来ない場合はご相談してください。
避妊
避妊について
女性が主体的に避妊をする場合はピルがよく知られていますが、それ以外にもIUD(子宮内避妊具)とIUS(子宮内避妊システム)があります。
IUD(子宮内避妊用具)
IUDとは
避妊を目的として子宮内に装着するもので、プラスチック製の本体に銅が巻き付いています。子宮内に装着すると子宮内で銅イオンが作用し、精子の運動を抑制したり、受精卵を着床させにくくすることで避妊効果があります。一度装着すれば、最長で5年間は避妊効果が続きますが、その間は外来で定期的に検診を受ける必要があります。妊娠阻止率は約98%で、高い避妊効果が得られます。妊娠を希望された場合は、器具を除去することで妊孕性は回復していきます。
IUDの装着を希望されても、子宮の形態に異常がある方、銅アレルギーのある方、骨盤内感染症の方については、使用することはできません。
IUS(子宮内避妊システム)
IUSとは
ミレーナとも呼ばれ、子宮内に薬剤(黄体ホルモン)が含まれたT字型の小さな器具を装着して使用します。黄体ホルモンが子宮の中で少しずつ放出され、子宮に作用します。黄体ホルモンの作用によって子宮内膜の増殖が抑えられ、子宮内膜が薄いままの状態となることで受精卵が着床しにくくなります。IUDとは異なり月経の量が少なくなります。
正しく装着することができれば、妊娠阻止率は99.8%程度です。IUS挿入後は、最長で5年間避妊効果が持続しますが、装着後は定期的な検診が必要となり、使い続けるには5年毎の交換が必要となります。妊娠希望となれば、子宮内にある器具を除去することで、妊娠することが可能となります。
このミレーナは、避妊目的での使用以外にも、月経困難症や過多月経の改善のための治療に用いられることがあります(この場合は、保険適用となります)。
IUD、IUSの副作用、合併症
不正出血や過多月経、月経痛、月経周期の変化、腹痛などが現れることがありますが、時間の経過と共に落ち着くことがほとんどです。稀に、重篤な合併症として、骨盤腹膜炎(骨盤炎症性疾患)、子宮外妊娠、子宮穿孔などを引き起こすこともあります。

人工妊娠中絶
人工妊娠中絶とは
人工妊娠中絶については、母体保護法によって定められております。人工妊娠中絶が可能なのは妊娠21週6日までで、満22週以上となった場合は適用外となります。
当院では、妊娠12週未満(11週6日)までの妊婦さんを対象に、人工妊娠中絶を行っております。妊娠12週を超えると分娩取扱施設での処置が必要となるため、該当する患者さんは希望の施設へ紹介させていただきます。